プロ直伝!防犯カメラの長距離配線のコツ
防犯カメラの設置場所によっては、配線の延長が必要になることがあります。たとえば、広大な敷地を監視する場合や、複数の建物にまたがって監視を行う場合などです。配線の延長には特有の課題が伴い、適切な準備と技術が求められます。
目次
長距離配線の基本
長距離配線とは、一般的な防犯カメラの距離を超える配線のことです。現在、主流のLANケーブルは100mまでの配線を想定しており、100mを超える配線ではさまざまな問題が発生する可能性があります。
たとえば、LANケーブルが長いとノイズの影響を受けやすくなり、電気信号が上手く伝わらなくなるかもしれません。電気信号が上手く伝わらないと、防犯カメラの映像に遅延や乱れなどが発生することがあります。また、PoE給電する機器は規格上100mまでの給電に対応しているものです。そのため、配線が100mを超えると、うまく給電できずに防犯カメラが作動しないかもしれません。
適切なケーブルの選定
長距離配線の成功には、適切なケーブルの選定が欠かせません。通信速度やLANケーブルの長さ、シールドの有無などを考慮して選定しましょう。
LANケーブルのカテゴリを確認
LANケーブルの選定時には、カテゴリを確認しましょう。LANケーブルのカテゴリによって、通信速度が変わるためです。カテゴリごとの最大通信速度や伝送帯域は次の表を参考にしてください。なお、最大通信速度の数字が大きいほど通信速度が早くなり、伝送帯域の数字が大きいほど送れる情報量が大きくなります。
カテゴリ | 最大通信速度 | 伝送帯域 |
---|---|---|
CAT.5 | 100Mbps | 100MHz |
CAT.5e | 1Gbps | 100MHz |
CAT.6 | 1Gbps | 250MHz |
CAT.6A | 10Gbps | 500MHz |
CAT.7 | 10Gbps | 600MHz |
CAT.7A | 10Gbps | 1000MHz |
CAT.8 | 40Gbps | 2000MHz |
UTPケーブルとSTPケーブル
UTPケーブルとSTPケーブルの違いは、シールド加工の有無です。
ケーブルの種類 | シールド加工 |
---|---|
UTPケーブル | × |
STPケーブル | 〇 |
シールド加工が施されているUTPケーブルは、ノイズの影響を受けにくくなるため、通信が安定するのがメリットです。たとえば、LANケーブルの近くに電気ケーブルが配線されている場合、電気ケーブルから発生したノイズによって通信が不安定になったり通信速度が低下したりする恐れがあります。このようなノイズによる悪影響を軽減してくれるのが、シールド加工なのです。
同軸ケーブルで500m以上の長距離配線も可能
センター機・ターミナル機を活用することで、500m以上の長距離配線を実現できます。通常、防犯カメラはLANケーブルでルーターと接続し、最大100mの配線が可能です。しかし、あいだにセンター機・ターミナル機を設置して、同軸ケーブルで接続することで700m以上(同軸ケーブル500m、LANケーブル100m×2)の配線を実現できます。
LANケーブルや同軸ケーブルはソリッドケーブルから購入できます。
PoE給電の活用
PoE給電を活用することで、電源不要で防犯カメラを動かすことが可能です。また、長距離配線時にはPoEハブやPoEエクステンダーを活用することで、100m越えのLAN配線を実現できます。
PoE(Power over Ethernet)とは?
PoEとはPower over Ethernetの略称で、LANケーブルを経由して防犯カメラに電力を供給できる技術のことです。一般的な防犯カメラを動作させるには、通信を行うLANケーブルと防犯カメラを動かすための電源が必要です。
しかし、LANケーブルから給電できるPoEを活用することで、電源不要で防犯カメラを動かせます。そのため、屋外や天井などの電源が設置されていない場所でも、LANケーブル1本で防犯カメラを設置可能です。ただし、長距離配線時には防犯カメラに届くまでに電圧降下が生じる恐れがあるため、防犯カメラの動作不良に繋がることもあります。そのため100mを超える場合には、PoEハブやPoEエクステンダーを活用します。
PoEハブについて
PoEハブとは、PoEに対応している防犯カメラに電力を供給する機器のことです。使用するPoEハブによって供給電力や接続できる防犯カメラの台数が異なるため、利用条件に適しているPoEハブを使用することが大切です。
PoEハブ1台で全ての防犯カメラの最大消費電力を上回っていることと、1ポートで供給できる電力が防犯カメラの最大消費電力を上回っている必要があります。また、PoE供給ポート数が接続する防犯カメラの台数よりも少ないと、すべての防犯カメラをネットワークに接続できません。
PoEエクステンダーについて
PoEエクステンダーは、PoEハブのように給電できるだけではなく、受電もできる機器のことです。LANケーブルの長さが100mを超えるときに、PoEエクステンダーを中継器として使用することで長距離配線を可能にします。PoEエクステンダーには、受電と給電ポートがあり、電源なしで使用できるのが特徴です。一般的なPoEエクステンダーには、受電と給電ポートがそれぞれ1ポートずつ用意されています。
カスケード接続(多段接続)の活用
カスケード接続(多段接続)を活用することで、さまざまなメリットがあります。しかし、悪影響を及ぼすこともあるので、正しく活用することが大切です。
カスケード接続のメリット
カスケード接続とは、ハブからハブにLANケーブルを接続して配線を延長することを指します。カスケード接続を用いることで、100mを超えるLAN配線を実現できます。また、多くの防犯カメラを接続できることもメリットです。どこまでもカスケード接続できるわけではありませんが、防犯カメラの接続台数を増やせるため、大規模なネットワークを構築できます。
カスケード接続の注意点
便利なカスケード接続ですが、正しく活用できなければ防犯カメラに悪影響を与えることもあります。たとえば、複数のデバイスを接続することで、全体の消費電力が増加します。ハブやスイッチには供給可能な電力量に限界があるため注意が必要です。ほかにも、ハブやスイッチを通過するたびに若干の信号遅延が発生するため、防犯カメラが正常に動作しないこともあります。
防犯カメラの配線を延長させる際の注意点
防犯カメラの配線は延長できますが、消費電力の増加や通信の遅延などが発生する恐れもあるため、最小限の長さで配線するのが基本です。また、設置場所によっては防水や耐候性対策などを行い、配線ルートの障害物に注意しなければなりません。
防水・耐候性対策を行う
屋外に配線する場合は、防水や耐候性に優れている保護材を活用しましょう。たとえば、雨や風などの侵入を防ぎ、LANケーブルを露出せずに配線できるPF菅やモールダクトなどを活用します。ほかにも、ケーブルの接続部を保護できるジョイントボックスの活用も有効です。
また、ケーブルの接続部が屋外になる場合は、自己融着テープで防水処理を行いましょう。これにより、コネクタ内部に水が侵入することによる不具合を防げます。
配線距離は最小限に抑える
配線距離を最小限に抑え、信号品質を維持しましょう。ケーブルの長さが短いほど、防犯カメラの映像は安定しやすいものです。また、LANケーブルの長さを抑えることは、コスト削減にも繋がります。
基本的に業務用のLANケーブルは数m単位での発注はできず、1箱100〜300mほどで発注します。そのため、LANケーブルの長さを気にせずに配線すると、追加でLANケーブルを発注しなくてはいけなくなる可能性があります。
障害物がないようにする
LANケーブルへの干渉を防ぐためには、物理的な障害物を避ける必要があります。前述しましたが、電気ケーブルとの距離が近いと干渉して防犯カメラの映像が乱れる可能性があるので、ケーブルを離して配線するのが基本です。
ほかにも、配管内に配線するときは、電気ケーブルと同じ配管を使用しない、もしくはケーブルが通っていない配管を使用するなど工夫しましょう。
まとめ
長距離配線を成功させる秘訣は、PoEハブやPoEエクステンダー、カスケード接続を用いることです。ただし、長距離配線では信号の減衰やノイズの影響などを受けやすくなるため、防犯カメラの映像が安定しなくなるリスクがつきまといます。専門業者に依頼すると、高額なフルークという機械でLANケーブルの品質確認、問題が起きたときの対処などを行なってくれます。そのため、長距離配線は信頼できる設置業者に依頼することを推奨します。
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